JAGAT info(ジャガットインフォ) 2015.7に掲載されました。

―御社をご紹介ください

1946年に父が謄写版印刷を始めたのが当社のスタートである。その後オフセット印刷を導入し、当初は地元の企業を中心に仕事をしてきたが、現在は関東圏の広告代理店や印刷会社を中心に全国から仕事を頂いている。商材はLED-UV印刷、スクラッチ印刷、可変印刷などを活用しての圧着DMやスクラッチカード、三角クジなど販促支援ツールを中心にしている。

私は1983年に入社したが、当時は印刷のことは何も分からなかったので、何度も展示会やセミナーに足を運んで印刷業界の動向について情報収集、勉強をした。そのころ1年ほどスクリーン印刷で電子基板印刷にも取り組んだ。90年代前半には業務範囲を拡大し、現在より社員も多かったが、地方の限られた商圏の中で他社との競争も激しく、設備投資などの負担もあり、経営状況はよくなかった。そんな中、92年に35歳で社長に就任したが、経営的には最も厳しいころでもあり、かなり苦労した。何とか苦境を脱して会社の将来の方向性を考えていた時に、アメリカの印刷会社や広告代理店を視察するツアーに参加する機会があり、大きな刺激を受け、その後の事業展開のヒントをつかむことができた。

―どのような取り組みを行ったのですか。

普通の印刷会社にはできない商材を持って差別化しようと、特殊印刷に対応できる6色UV印刷機を2002年に導入した。商材として最初に開発したのが当時はまだ珍しかった圧着ハガキで、サンプルを作って各種展示会などに出展した。それとともにホームページを充実させ、営業レスを目指してインターネット経由での受注を狙った。今もいろいろ商品を開発し、面白いと思ってもらえるようなサンプルを作って展示会などに出展しているが、商品を知ってもらうこと、直接見てもらうことが重要で、それが受注につながる。

一時は訪問営業を徐々に減らしていったが、最近は再びお客様との対面営業を少しずつ増やしている。当社はホームページを見れば分かるが、動画で商材を詳しく紹介しているし、各商材にはテンプレートを用意しており、これをダウンロードしてデータを作って入稿できるようにしてある。だから対面なしでも、お客様は発注できるし、当社も受注し生産、納品できる。しかし、データ受けだけでは、その仕事のことしか分からない。つまり、今後の予定やその仕事の周りに他にどんな仕事があるのかという情報が入らない。そういった意味では、訪問した方がよいと思うお客様にはきちんと対面で打ち合わせながら情報を取り、さまざまな提案をしていくことが重要だと考えるようになった。

―具体的にはどのような商材がありますか。

主力は圧着DM、圧着くじ、スクラッチSPツールなどで、ネットメディアの連携ツールとしても活用されている。当社の商品はマーケティング支援を行うものだから、DMにしてもレスポンスのないものでは意味がなく、それではお客様に役立つものとは言えない。だから、例えば圧着DMではチケットやクーポン券を入れて来店を促すような仕組みにすれば、それを持って来店したらその効果を測定できるわけである。圧着ハガキにミシン目を入れてチケットになるようものを開発するなど、あくまでレスポンスを取れるような提案ができる仕組みのサンプル商材をずっと作ってきているし、それが当社のスタイルになっている。お客様に個別に提案しているわけではないが、いろいろなサンプルを作って面白いと感じてもらって、それをテンプレートから各社が独自のデザインを作ってお客様のお客様に提案できるようにしている。ぜひ当社の商材を使って提案してみてほしい。

そのほかにOne to Oneマーケティングへ対応するためにバリアブル印刷に力を入れている。5年前にコダックのProsperS5を導入し、インラインでUV印刷機に搭載した。例えば注文用返信ハガキのお客様の記入欄に、お客様の住所や名前、前回注文した商品などをあらかじめ印刷しておけば、お客様の手間を省き、返信率は上がる。個人情報を扱うために、2007年に”は新社屋に移転しセキュリティーを高め、プライバシーマークも取得した。入館はセキュリティカードが必要だし、個人情報を扱う部屋は再度セキュリティカードが必要だ。顧客情報を扱うサーバーはオフラインで、アクセス権を持つ担当者は2人だけで、指紋認証が必要と2重3重のセキュリティーを掛けている。加工・発送も外注しないですべて自社で行っている。

―今後の展開についてはいかがですか。

昨年アメリカに行ったときに、マーケティングオートメーションを知り、可能性を感じた。今後、マーケティングオートメーションに力を入れていくが、デジタルメディアが中心でそれ専門にするところとデジタルで勝負しても不利なので、紙があるからこそのマーケティングオートメーションで差別化したい。実際まだ紙を使ったものはないと思う。もちろんメールやWebなどのデジタルメディアを使わないわけにはいかないので、イメージバリアブルやPURLなどを組み合わせてDMの効果を上げたり、データベースを精査・分析したりして、より効果的な活用ができるように目指していく。今は、印字中心のバリアブルはかなりこなしているが、これからはカラーのイメージバリアブルをマーケティングに生かし、お客様がメリットを享受できる提案を行っていく。正直に言うと、マーケティングオートメーションは高い階段だと思うし、もしかすると滑り落ちるかもしれないが、昇ぼらなければならない階段だと思っている。現在、当社は順調に仕事を頂いているが、印刷市場が縮小しているなかで、今のままがずっと続くとは思えない。だからこそ可能性を見つけてチャレンジしていかないとならない。

もう一つはチェーン展開しているようなお客様の販促物はロットが大変に大きい。そういったお客様に対応する生産能力をどう確保するかである。設備投資するか、パートナーをネットワーク化していくかなどの選択肢があるが、そこをしっかりと対応していきたい。また、これらからの販促支援では動画の活用も不可欠になっていく。そこで、スタジオを設置し映像制作にも対応している。例えばDMにQRコードやARを付けて映像を流すことは増えていくだろう。その時に、自社で動画を制作できることは提案の幅を広げる。

―経営者として大切にしていることは何ですか。

変化に対応することだ。以前は「印刷業界の常識は我が社の非常識」と言いながら、変革に取り組んできた。経営環境や市場環境は変わっていくのだから、特に小企業が生き残るには、その変化にしっかりと対応できることが重要だ。しかし、タイミングが大切で、早過ぎても、みんなが取り組んでからでもダメ。そのために常に情報感度を上げて、時流をつかみ、経営に生かしていく必要がある。マーケティングオートメーションへの取り組みもそういうことだ。